インフルエンサーに投稿を依頼したところ、ステマ疑惑で批判が殺到した、薬機法違反で炎上した——こうしたケースは実際に起きています。インフルエンサーマーケティングは集客・認知拡大に有効な施策ですが、法令や表現ルールを知らないまま実施すると、ブランドへの深刻なダメージにつながります。
この記事では、炎上の3大原因と関連法令の要点、絶対に守るべき7つのルール、インフルエンサーへの依頼時のチェックリスト、万が一炎上した場合の対処法まで、実務で使えるレベルで解説します。
1. インフルエンサーマーケティングが炎上する3大原因
原因①:ステルスマーケティング(ステマ)
広告であることを隠して、まるで個人の感想であるかのように見せかける宣伝行為です。2023年10月から景品表示法違反として規制対象になりました。
炎上パターン: インフルエンサーが「最近これ使ってる♪」と投稿。実際は企業からの依頼なのに「#PR」「#広告」の表記がなく、後日発覚してフォロワーから批判が集中する。
原因②:薬機法違反
化粧品・健康食品・サプリメント・医療機器などに関して、効果・効能を断定したり、医薬品的な効果を暗示したりする表現が薬機法に抵触します。
炎上パターン: 「このサプリを飲んだら1ヶ月で5kg痩せた!絶対効果ある!」という投稿が「薬機法違反では?」「誇大広告だ」と指摘を受けて拡散する。
原因③:誇大広告・虚偽表示(景品表示法違反)
実際の商品・サービスよりも著しく優れている、または有利であると誤認させる表示が景品表示法で禁止されています。
炎上パターン: 「シミが完全に消えた!」というビフォーアフター付き投稿が「加工している」「虚偽広告だ」と指摘され、消費者庁への通報に発展する。
2. ステマ規制の内容と正しい広告表記の方法
2023年10月施行のステマ規制の概要
2023年10月1日より、ステルスマーケティングは景品表示法違反として正式に規制対象となりました。企業がインフルエンサーに依頼した投稿に広告表記がない場合、依頼企業も違反の主体となります。
罰則:
- 措置命令(違反行為の停止命令)
- 社名の公表
- 課徴金(売上の3%)
正しい広告表記の方法
広告であることを明示するために、投稿の冒頭または目立つ位置に以下のいずれかを記載することが必要です。
OK表記例:
- 「#PR」
- 「#広告」
- 「#プロモーション」
- 「#〇〇(企業名)とのタイアップ」
- 「〇〇様より商品提供」
NG表記パターン:
- ハッシュタグの末尾に小さく「#PR」と記載(目立たない位置では不十分)
- 文章の途中に紛れ込ませる
- 「#〇〇とコラボ」のみ記載(広告と明記されていない)
OK表記の具体例:
【PR】 〇〇株式会社様よりご依頼いただき、こちらの商品を紹介させていただきます。 (本文) #PR #〇〇株式会社
インフルエンサーへの依頼文に盛り込む内容
依頼メッセージや契約書に、広告表記ルールを明示してください。
投稿の際は、必ず以下の表記をお願いいたします。
・投稿の冒頭に「【PR】」
・ハッシュタグに「#PR #〇〇(企業名)」
これは法律で義務付けられているため、必ず明記をお願いいたします。
「自然な投稿にしたいからPR表記を入れたくない」という考えは、法令違反になります。
3. 薬機法:絶対に使ってはいけない表現と代替表現
薬機法の対象商品
化粧品、医薬部外品、健康食品・サプリメント、医療機器などが対象です。これらを扱う場合は以下のルールを厳守してください。
NG表現と代替OK表現の対比
効果・効能の断定
NG: 「これを飲めば痩せます」「シミが消えます」「ニキビが治ります」「必ず効果があります」
OK: 「ダイエットのサポートに」「シミ予防に」「ニキビケアに」「私の場合はこんな変化を感じました」
医薬品的な効果の暗示
NG: 「病気が治る」「血圧が下がる」「アレルギーが改善する」「がん予防に効く」
化粧品・健康食品は医薬品ではありません。病気の治療・予防を謳うことは一切できません。
誇大な保証表現
NG: 「100%効果があります」「絶対に痩せる」「医師も驚いた」
OK: 「私は満足しています」「個人の感想です」「使い心地が良かったです」
ビフォーアフター写真の注意点
NG: ダイエットサプリで劇的な変化を示す写真に「このサプリのおかげで痩せた」と断定
OK: 「食生活の改善・運動・本サプリのサポートにより、3ヶ月でこんな変化がありました」+「効果には個人差があります」の明記
化粧品で謳える効果は56項目のみ
厚生労働省が定めた56項目のみが化粧品で謳える効果の範囲です。
謳える例: 「肌を整える」「肌にうるおいを与える」「肌を保護する」「日焼けを防ぐ」
謳えない例: 「シワが消える」「シミが消える」など、56項目を超える効果の表示は違反になります。
インフルエンサーへの禁止表現・OK表現リスト(共有用)
薬機法に抵触する可能性があるため、以下の表現は避けてください。
NG表現: 「痩せる」「治る」「消える」などの断定表現/「必ず効果がある」などの保証表現/「病気が治る」などの医療的効果を示す表現
OK表現: 「私の場合はこんな変化を感じました」「使い心地が良かったです」「サポートアイテムとして使っています」「効果には個人差があります」
4. 景品表示法:誇大広告・虚偽表示の禁止事項
優良誤認表示(品質の誇大表示)
実際よりも著しく優れていると誤認させる表示が禁止されています。
NG例:
- 「No.1」「最高品質」(根拠のない場合)
- 「100%天然成分」(合成成分も含む場合)
- 「医師監修」(形式的な監修で実態がない場合)
OK例:
- 「〇〇調査で満足度No.1(2024年、n=500)」と根拠を明記
- 「主要成分は天然由来」
- 「〇〇医師監修のもと開発」
有利誤認表示(価格・条件の誇大表示)
NG例:
- 「通常10,000円が今だけ3,000円!」(通常価格での販売実績がない場合)
- 「期間限定」(実際は常時販売している場合)
- 「先着100名」(実際は制限がない場合)
OK例:
- 「定価10,000円のところ、初回限定3,000円」
- 「〇月〇日まで限定」(実際にその日程で終了する場合)
口コミ・レビューの偽装禁止
サクラによる偽のレビュー投稿、ネガティブなレビューの意図的な削除、良いレビューだけの選択的表示はいずれも違反となります。実際の購入者のレビューをポジティブ・ネガティブ両方含めて表示することが原則です。
5. 著作権・肖像権:他人の権利を侵害しないための注意点
著作権侵害のNG例
- ネットで拾った画像を無断使用
- 他人の投稿をスクリーンショットして無断転載
- BGMに著作権楽曲を無断使用
肖像権侵害のNG例
- カフェや街中で撮影した写真に他人の顔がはっきり写っている
対処法: 顔をぼかす・モザイク処理を施す、後ろ姿のみにする、本人の許可を取る。
インフルエンサーへの事前共有事項
投稿に使用する写真・動画について、ご自身で撮影したもの、または使用許諾を得たもののみ使用してください。他人の顔が写り込んでいる場合はぼかし処理をお願いします。音楽を使用する場合は著作権フリーのものをご使用ください。
6. 実際の炎上事例から学ぶ:何が問題だったのか
事例①:ステマ疑惑による炎上
概要: 有名インフルエンサーが「最近これ使ってる!超良い!」と商品を紹介。#PRの表記なし。後日、企業からの依頼であることが発覚。
問題点: 広告表記の欠如。ステマ規制違反。
正しい対応: 投稿の冒頭に「#PR」を明記し、企業とのタイアップであることを明示する。
事例②:薬機法違反による炎上
概要: インフルエンサーがダイエットサプリを紹介。「これ飲んだら1ヶ月で5kg痩せた!絶対効果ある!」と投稿。
問題点: 効果の断定(「痩せた」)、保証表現(「絶対効果ある」)がいずれも薬機法違反。
正しい表現例: 「私の場合は、食事管理と運動と併せて使用し、1ヶ月で5kg減量できました。効果には個人差があります」
事例③:誇大広告(薬機法+虚偽広告)による炎上
概要: 化粧品メーカーの依頼でインフルエンサーが「シワが消えた!シミが完全になくなった!」とビフォーアフター写真付きで投稿。写真が加工されていたことも発覚。
問題点: 化粧品で「シワが消える」は薬機法上の謳える範囲を超えている。写真加工は虚偽広告にあたる。
正しい表現例: 「使い続けて肌の調子が良くなりました。個人の感想です」程度に留め、写真は加工しない。
7. 炎上を防ぐ7つのルール
以下の7つを全施策で徹底することが、炎上リスクをゼロに近づける最短経路です。
ルール①:必ず広告表記をする 投稿の冒頭に「#PR」「#広告」を明記し、企業名も記載する。
ルール②:薬機法を守る 化粧品・健康食品は効果を断定しない。「治る」「痩せる」などの断定表現は使わない。
ルール③:誇大表現を避ける 「絶対」「100%」「必ず」などの保証表現は使用しない。
ルール④:事実のみを伝える 実際に使用した正直な感想のみ。嘘や誇張を依頼しない。
ルール⑤:他人の権利を侵害しない 著作権・肖像権を遵守する。他人の写真・音楽を無断使用しない。
ルール⑥:ネガティブな情報も隠さない 「デメリットもあります」「向いていない方もいます」と正直に伝えることが信頼獲得につながる。
ルール⑦:契約書に法的根拠を明記する インフルエンサーとの契約書に守るべき法令・禁止事項・違反時の損害賠償条項を盛り込む。
8. 依頼時のチェックリストと契約書に入れるべき条項
依頼前・投稿前・投稿後のチェックリスト
契約前の確認:
- 広告表記のルールを説明したか
- 薬機法・景品表示法の注意事項を伝えたか
- 禁止表現リストを共有したか
- 著作権・肖像権について確認したか
- 契約書に法令遵守の条項を入れたか
投稿前の確認(事前チェックを行う場合):
- 「#PR」などの表記があるか
- 薬機法違反の表現がないか
- 誇大表現・虚偽表示がないか
- 他人の権利を侵害していないか
投稿後の確認:
- 投稿内容に問題がなかったか
- ネガティブなコメントなど炎上の兆候がないか
- 法令違反の有無を確認したか
契約書に入れるべき主要条項(例)
法令遵守条項:
第〇条(法令遵守) インフルエンサーは、投稿に際し、景品表示法(ステルスマーケティング規制を含む)、薬機法、著作権法、その他関連法令を遵守するものとする。特に、広告であることの明示(#PR等の表記)、効果効能を断定する表現の不使用、他人の著作物の無断使用の禁止を厳守すること。
禁止事項条項:
第〇条(禁止事項) インフルエンサーは以下の行為を行ってはならない。①虚偽または誇大な表現の使用、②薬機法に違反する表現の使用、③ステルスマーケティングに該当する投稿、④他人の権利の侵害、⑤公序良俗に反する内容の投稿。
損害賠償条項:
第〇条(損害賠償) インフルエンサーが本契約または法令に違反し、企業に損害が生じた場合、インフルエンサーはその損害を賠償するものとする。
9. 万が一炎上してしまった場合の対処法
対処の4ステップ
ステップ①:事実確認 何が問題だったかを速やかに特定する。投稿内容・コメント・拡散状況を即座に確認する。
ステップ②:投稿の削除または修正 法令違反がある場合は直ちに削除または修正を行う。インフルエンサーに連絡し、協力を依頼する。
ステップ③:公式謝罪 問題があった場合は企業の公式アカウントから速やかに声明を出す。
謝罪文の例:
この度、弊社が依頼したインフルエンサーの投稿において適切な表記が欠けていたことをお詫び申し上げます。該当の投稿は削除し、今後はより一層、法令遵守を徹底してまいります。
ステップ④:再発防止策の実施 社内チェック体制の強化・契約書の見直し・禁止表現リストの更新など、同じ問題が起きない仕組みを整える。
絶対にやってはいけない対応
- 炎上を無視する・逃げる
- 批判コメントを削除する
- 言い訳や責任転嫁をする(「インフルエンサーが勝手にやった」は通用しない)
企業がインフルエンサーに依頼した以上、企業側にも当然の責任があります。炎上の初動対応の速さと誠実さが、ブランドダメージを最小化するうえで極めて重要です。
10. まとめ:正しい知識でインフルエンサー炎上リスクは防げる
この記事のポイントをまとめます。
- インフルエンサーマーケティングの炎上3大原因は「ステマ」「薬機法違反」「誇大広告・虚偽表示」
- 2023年10月施行のステマ規制により、広告表記のない依頼投稿は企業も景品表示法違反となる
- 化粧品・健康食品では効果を断定する表現(「痩せる」「治る」「消える」等)は薬機法違反
- 化粧品で謳える効果は厚生労働省が定めた56項目のみ
- 景品表示法では根拠のない「No.1」や実態のない「期間限定」表示も違反対象
- 炎上を防ぐ7つのルール(広告表記・薬機法遵守・誇大表現回避・事実のみ・権利保護・ネガティブ開示・契約書整備)を全施策で徹底することが重要
- 万が一炎上した場合は「事実確認→削除・修正→公式謝罪→再発防止」の4ステップで迅速対応する
- 依頼企業には「インフルエンサーが勝手にやった」は通用しない。契約書への法令条項の明記が必須
法令を守ることは単なるリスク回避にとどまらず、消費者との信頼関係を築く基盤になります。正直で誠実なインフルエンサーマーケティングこそが、長期的なブランド価値の向上につながります。
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